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しょうじょじごく

少女地獄

夢野 久作

「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页

青空文庫

その間じゅう私は、自分のノッポも、醜さも、火星の女である事も何もかも忘れて、何となく皆さんとお名残が惜しい気持が致しますままに、出来るだけ大勢のお友達と顔を見合って、笑い合って、手を取り合ってなつかしみ合ったのですが、あの一時間こそは私の一生涯のうちでも、やっと人間らしい気持のした、一番楽しい一時間だったのでしょう。

それから間もなく始まった謝恩会の模様を、私はすこし詳しく書かなければなりません。それはこの世に又とない校長先生の悪徳を、眼も眩むほど美しく、上品に飾り立てた芝居だったのですから。それは私以外の人達が一人も気付いてお出でにならない……そうして同時にタッタ一人私だけを苛責め、威かすために執行われた、世にも恐ろしい、長たらしい拷問だったのですから……。

最初に全校の生徒の「君が代」の合唱がありましたが、その純真な、荘厳この上もない音律の波を耳に致しておりますうちから私は、もう身体中がゾクゾクして、いても立ってもおられないくらい空恐ろしい、今にも逃げ出したいような気持になってしまいました。……心のドン底から震え上らずにはおられない……「君が代の拷問」