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しょうじょじごく

少女地獄

夢野 久作

「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页

青空文庫

殿宮アイ子さんは在学中、私の大切な大切な愛人だったのです。お友達のうちで詩というもののホントウにおわかりになる方はアイ子さんお一人だったのです。誰も知りませんけれども、時々コッソリとお眼にかかった事が何度あるかわかりませんので、あの物置のアバラ家の二階で、虚無のお話をし合ったのも一度や二度ではなかったのです。けれども、こうしてお宅を訪問した事はこの時が初めてだったのです。

殿宮アイ子さんはホントにシッカリした方でした。私の話をお聞きになっても、驚きも泣きもなさらないで、美しい唇をシッカリと噛みしめ、張りのある綺麗なお眼を真赤にして輝かしながら、私の長い長いお話をスッカリ受け入れて下さいました。そうして私のお話がすみますと、やっと少しばかりの涙を眼頭にニジませながら、思い詰めたキッパリした口調で言われました。美しい美しい静かなお声でした。

「……ありがとうよ。歌枝さん。お蔭で今まで私にわからなかった事がスッカリわかりましたわ。私が初めて知りました真実のお父さん……森栖校長先生を反省さして下さる貴女の御親切に私からお礼を言わして下さいましね。貴女のなさる復讐は、どんな風になさるのか存じませんけど、貴女の仰言る通りに、誰にもわからないようにその人を反省させるだけの意味の復讐なら、大変にいい事だと思いますわ。