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しょうじょじごく
少女地獄
夢野 久作
「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页
ほんとに白鷹先生ったら仕様のない。稼ぐ事ばっかし夢中になって……キット平塚の何とか言う銀行屋さんの処ですよ。お友達と下手糞の義太夫の会を開くたんびに、白鷹先生を呼ぶんですから、それが見栄なんですよ。つまらない……」
「アハハ。そう悪く言うもんじゃないよ。そんな健康な、金持の患者が殖えなくちゃ困るんだ。耳鼻科の医者は……」
「だって久し振りに先生と会うお約束をしていらっしゃるのに……」
「ナアニ。会おうと思えばいつでも会えるさ」
「……だって」
と口籠りながら彼女は如何にも不平そうな青白い眼付で、私の顔を見上げた。……が……この時に私がモウ少し注意深く観察していたら、彼女のそうした不安さが尋常一様のものでなかった事を容易に看破し得たであろう。「会おうと思えばいつでも会える」と言った私の言葉が、彼女にドレ程の深刻な不安を与えたか……彼女をドンナに恐ろしい脅迫観念の無間地獄に突き落したかを、その時に察し得たであろう。……自分の実家の裕福な事を如実に証明し、同時に、自分の看護婦としての信用が如何に高いものが在るかをK大助教授、白鷹先生の名によって立証すべく苦心していた彼女……かの「謎の女」