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しょうじょじごく

少女地獄

夢野 久作

「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页

青空文庫

しかもその小包に添えた手紙を見ると紛れもない男のペン字で、相当の学力を持ったインテリ式の文句であった。だからこちらでも非常に恐縮して、折よく故郷から送って来た鶏卵素麺に「今度の庚戌会へは是非とも出席します」と言う意味の手紙を添えて、下六番町の白鷹先生宛に送り出したが、それは何処へ届いたやら、あるいは横浜の臼杵病院を一歩も出なかったかも知れないと思う。その手紙や小包を渡して、送り出すように命じたのが、外ならぬ姫草ユリ子だったから……。

ところが、それから十一月の初旬に入ると、彼女はまたも大変な失策を演じた。もちろん、それは彼女自身から見ると、いかにも巧妙な、水も洩らさぬ筋書に見えたのであろうが、それがアンマリ巧妙過ぎたために、おぞましくも私等一家から、彼女自身の正体を見破られる破目に陥ったのであった。

私の日記を翻して見ると、それはやはり十一月の三日、明治節の日であった。彼女が事を起すのは、いつも月末から初旬へかけた数日のうちで、殊に白鷹先生から電話がかかったり、手紙が来たりするのは大抵三日か四日頃にきまっているのであった。そこにこの「謎の女」の神秘さがあった事を神様以外の何人が察し得たであろう……。