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しょうじょじごく

少女地獄

夢野 久作

「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页

青空文庫

では行って参ります」

「気を付けて行っといでよ。お天気もモウ上るだろう」

彼女と私とがコンナ風にシンミリとした憂鬱な調子で言葉を交した事はこの時が初めてだったように思う。何となく虫が知らせたとでも言おうか。それともこの時すでに、白鷹先生の事に関して、絶体絶命の破局にグングン追い詰められつつ在る事を自覚し過ぎるくらい、自覚していた彼女自身の内心の遣る瀬ない憂鬱さが、私の神経に感じたものかも知れないが……。

いつもの通り病院を仕舞った私は、雨上りの黄色い夕陽の中を紅葉坂の自宅に帰って、夕食を仕舞った。その序に、白鷹夫人のきょうの出来事を比較的明るい気持で喋舌っていると、そのうちに黙って給仕をしていた妻の松子がフイッと大変な事を言い出した。

「ねえあなた。姫草さんの話は、あたし、どうも変だと思うのよ」

「……フウン……ドウ変なんだい」

「あたしこの間からそう思っていたのよ。姫草さんが紹介した白鷹先生に、貴方がどうしてもお眼にかかれないのが、変で変で仕様がなかったのよ」

「ナアニ。廻り合わせが悪かったんだよ」

「いいえ。それが変なのよ。だって、あんまり廻り合わせが悪過ぎるじゃないの。