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しょうじょじごく

少女地獄

夢野 久作

「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页

青空文庫

「馬鹿な。奥さんが病気なのに来るもんか」

「プッ。馬鹿ね貴方。まだ信じていらっしゃるの。白鷹の奥さんの卒倒騒ぎを……」

「信じているともさ……だからお見舞に行くんじゃないか」

「お見舞に行くのを止して頂戴……そうして知らん顔して庚戌会へ出席して御覧なさいって言うのよ。キットほんとの白鷹先生がいらっしゃるから……」

「……ほんとの白鷹先生。ふうん。つまり、それじゃ今迄の白鷹先生は、姫草ユリ子の創作した影人形だって言うんだね」

「ええそうよ。何だかそんな気がして仕様がないのよ。あの娘の実家が裕福だって言うのも、当てにならない気がするし、年齢が十九だって言うのも出鱈目じゃないかと思うの……」

「驚いた。どうしてわかるんだい」

「あたし……あの娘が病院の廊下に立ち佇まって、何かしらションボリと考え込んでいる横顔を、この間、薬局の窓からジイッと見ていた事があるのよ。そうしたら眼尻と腮の処へ小さな皺が一パイに出ていてね。どうしても二十五、六の年増としか見えなかったのよ」

「ふうん。何だか話がモノスゴクなって来たね。姫草ユリ子の正体がダンダン消え失せて行くじゃないか。幽霊みたいに……」