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しょうじょじごく
少女地獄
夢野 久作
「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页
「あれは赤ではありませんよ」
「ヘエ……」
と私は少々面喰って眼をパチパチさせながら坐り直した。
「折角のお骨折りでしたがね。取り調べてみると赤の痕跡もありませんよ。……尤も郷里は裕福というお話でしたが、電話と電報と両方で問い合わせたところによりますと、実家は裕福どころか、赤貧洗うが如き状態だそうです。何でも直ぐの兄に当る二十七、八になる一人息子が、家土蔵をなくするほどの道楽をした揚句、東京で一旗上げると言って飛び出した切り、行方を晦ましているそうで、年老った両親は誰も構い手がないままに、喰うや喰わずの状態でウロウロしているそうです。勿論あの女……何とか言いましたね……そうそうユリ子からも一文も来ないそうで、お話の奈良漬の一件や何かも彼女の虚構らしいのです。姫草ユリ子という名前も本名ではないので、両親の苗字は堀というのだそうです。慶応の病院へ入る時に自分の友人の妹の戸籍謄本を使って、年齢を誤魔化して入ったと言うのですがね。本当の名前はユミ子というのですが、その堀ユミ子が十九の年に、兄の跡を逐うて故郷を飛び出してからモウ六年になると言うのですから、今年十九という姫草の年齢も出鱈目でしょう。