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しょうねんとうみ

少年と海

加能 作次郎

「赤い鳥」1920(大正9)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,808 字 · 10 页

青空文庫

とからかうように言いました。

福浦というのは、為吉の村の向岸の岬の端にある港で、ここから海上三里のところにあるのでした。

為吉の村は、能登国の西海岸にある小さな漁村で、そして父親は貧しい漁夫でした。村の北の方は小高い山を負い、南に海を受けているので、南東の風が吹くと、いつも海が荒れるのでした。漁舟や、沖を航海している帆前船などが難船して、乗組の漁夫や水夫が溺死したりするのは、いつもその風の吹く時でした。そしてその風の吹く時には、きっと福浦岬から続いた海中に加賀の白山がくっきりと聳え立っているのが見えるのでした。その外の時には大抵、空の色合や、雲の具合で見えないのが普通でした。

「白山が見えると、南東風が吹く、海が荒れる、船が難破する、そして人が死ぬ。」

こんな考が、村の人達の話や、自分の実見やらで、いつの間にか為吉の頭に出来あがっているのでした。つい一カ月ばかり前にも、村の漁舟が一艘沖から帰りがけに、その風に遇って難破し、五六人の乗組の漁夫がみんな溺死して、その死体がそれから四五日もたってから隣村の海岸に漂著しましたが、その日も矢張り朝から白山の姿が物すごく海の中に魔物のように立っていました。