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おぜざつだん

尾瀬雑談

木暮 理太郎

「山岳」1925(大正14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,224 字 · 7 页

青空文庫

私は同行の松本君と燧岳の頂上に登って、四方の展望に耽った。大江山から袴腰山、黒岩山あたり鬼怒沼方面にかけて、打ち続く針葉樹林の真黒なのに驚いたが、眼を北に転じて脚下の檜枝岐川や只見川の渓谷を見た時、再び凝然として目を瞠らざるを得なかった。あの曾て国境山脈から眺めた片品川渓谷の美観は、今やまさしく脚下の両渓谷に再現しているではないか、殊に狭い只見川の全渓を埋み尽した紅葉には、何等の形容詞を呈していいかを知らない。私はすっかり満足してしまった。

尾瀬を立ち去る日はまた雨であった。三平峠の下り口に立って霧の罩めた渓底に見るともなく目をやっていると、一陣の南風が樹梢を払って、木の葉が乱れ飛ぶと共に、霧の幕がすうと取れて、そこに山上から瞰下ろして夢寐にも忘れなかった景色の一部が実現した。片品谷の紅葉。然し能く見ればそれは依然としてあの枯葉同様の葉によって作られた美観であった。私はここに於てか始めて燧山上から眺めた紅葉も、これと同様のものであることを悟って、これからは紅葉に対する観賞の態度を改めなければなるまいと感じたのであった。

序に長蔵小屋で聞いた事を紹介すると、岩魚は十月頃から寒さに向う程大きいものが獲れるそうである。