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おぜざつだん
尾瀬雑談
木暮 理太郎
「山岳」1925(大正14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,224 字 · 7 页
其時分になると、産卵の為に沼から細い溝を溯って来るので、途中へ筌を伏せて置けば容易に捕えられるという。成程溝を覗いて見ると少し深い所には、八、九寸から一尺余もある岩魚や姫鱒が泳いで居る。手網でもあれば造作なく掬える。姫鱒は五万尾とか沼へ放したそうであるが、これは失敗に終って大部分は下ってしまったという。それでも七、八寸のものは盛にとれて食膳を賑わす。岩魚の大なるものは六百目を超え、長さ二尺に余るそうであるが、今までにとれた最大のものは一貫六百目のものであったそうな。何にせ十月は岩魚が飽きる程食べられ、兎や山鳥や時としては熊の肉も膳に上り、汁の実にうまい茸類が採れ、小屋の前の畑には蕪菁、大根、葱などの野菜も能く生育するので、山中とも想われぬ馳走にありつける。
沼の田螺(マルタニシと称する普通の種類也)も大きいが、鰌なども八寸以上のものがよく獲れるそうである、沼尻川でいつか捕えた鮒は、鮒とはいえない程余りに大きかったので、これこそ主とでもいう可きものと如何にも気味わるく、再び河に放してしまったという。鮒といえば六月上旬に沼の氷が溶け去った後に、大小の鮒が死んで浮き上り、汀に打ち寄せられている事がある。