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やまだちもんどう
山だち問答
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,163 字 · 32 页
「然し帰りには衣服大小すべて渡す約束でしたから」
「約束、約束、約束」と、権太夫は我慢を切らしたように叫んだ、「……正しい人間に対してならかくべつ、山だち盗賊を相手になんの約束だ、そんなたわ言は申し訳としても通用はせんぞ」
「そうかも知れません、けれど私はたとえ相手が山だち強盗でも、武士としていったん約束したことは守るのが当然だと信じます」
「信じたければ信ずるがよい、人間にはそれぞれ考え方のあるものだ、見解の相違を押し付けるわけにもゆくまいからな」
然しと権太夫はそこで開き直った、「……然しこのように見解の相違があっては婿舅になってもうまくはまいるまい、幸いまだ祝言まえのことだし、女との縁組はいちおう破談にしようではないか」
「それがお望みなれば致し方がありません、どうぞ宜しいように」
玄一郎はさすがに額のあたりを白くした。権太夫は、また改めてその使いをよこすと云って去った。……その事のあった翌日、下僕がふいと出奔した。自分の口から不用意にもれたことが意外な騒ぎに発展したので、たぶん居たたまれなくなったのだろうが、「こんな主人をもっていては世間へ出られないから」