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やまだちもんどう
山だち問答
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,163 字 · 32 页
ことさら自分を卑下する気持もないが、不相応に買いかぶられるのは迷惑である、それでかなりためらったのだが、おそらくそれを察したのだろう、佐田権太夫が再三やって来て、
「人間は謙虚であることもよいが、然るべき場合には堂々と自分を主張することも大切だ。才分というものは備わっていると同時にみずから認めなければ萎縮してしまう、今そこもとに必要なのは自分が千人にすぐれた人物だという自信をもつことだ」
繰り返しそう云った。単にそれだけが原因ではなかったが、その言葉から思い当ることもありまた権太夫の熱心さにうたれて、結局その縁談を承知したのであった。
佐田のほうで知己に語ったのであろう、はなしが纏まるとすぐ、同僚たちが、入代り立代り祝いに来た、「いよいよ時節が来たな、おれは以前からそう思っていたんだ、いまに郡は出世するぞってさ」「この機会を外さずひとふんばりやって呉れ、おれで役に立つことがあったら犬馬の労をとるぞ」「うしろにおれたち昔の仲間が控えていることを忘れないように頼む」みんなたのもしげに、或いはかなり追従めかして、それぞれに友情の籠った言葉を述べていった。