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やまとむら
山と村
木暮 理太郎
「山」1934(昭和9)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,705 字 · 10 页
に赤糸縅の鎧に白い母衣をかけ、馬には乗らず槍を杖にして立っている平山の三武者を飾り、山の上には松の梢に数十旒の白旗を靡かせ、一の谷の合戦を模した飾物を作ったことがある。高い所から瞰下ろすと新らしい稲の刈株が目について目障りであったとはいえ、珍しい企だけに評判は高かった。それも十日程過ぎて一夜吹き荒れた赤城颪の強い時雨に、熊谷も敦盛も敢えない最期を遂げたのであった。
村の附近には古墳が多い。其一で鶴山と呼ばれているのは、前方後円の大古墳で、正面を東に向け、周囲七町に余る堀を繞らしていた。今は冢の上まで開墾されて桑畑と成っているが、昔は大きな楢の林で狐が棲んでいた。子を育てる五月頃になるとよく鶏を盗まれて忌々しく思った村の若者達は、其穴を掘って狐を退治した時にも石椁には触れなかった。円冢の高さは三十尺はあろう、其上からは赤城山と秩父の山とが最もよく望まれる。
赤城群峰は、カツキル連山中で最も高いらしいウェスト・キルよりも三百乃至六百米も高い。標高六十米前後の村から直径六里の距離に仰ぐ群峰の姿は、次第に高まる裾野の上に、根張り大きくどっしりと横たわって、実に雄大である。