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やまのかなたは

山の彼方は

宮本 百合子

常識とはどういうものだろう

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,798 字 · 14 页

青空文庫

軽くあしらっていると、それがかねがね清少納言の讚嘆をあつめていて地位も名声も高い美男の殿上人であったので清少納言は少からずうろたえる。その殿上人は、女の人は寝起きの顔がことの外美しいと聞いていたから見に来たのですよ。帝がいらしたうちからここにいました、といったことなどが作者の当時の官女らしい才気の反応で描かれている。

この朝の出来事を書いているとき、作者は帝と中宮とが並んで外を見ていられる様子をただおめでたいことだと言っているばかりである。お仲が睦じくてめでたいという表現で終っている。ところが私たちにはその朝の有様が、もっと含蓄をもって語りかけて来るように思われる。経済や政治の力に押されて若い帝が、公には藤原氏の関係の中宮を立てていられながら今は有力な背後関係を失っている定子の美しい心立にひかされて真実の二人の愛は変らず、そうやって端近く侘住んでいる定子の許で夜を過ごし、朝早く日頃の帝のお暮らしにはもの珍らしくうつる門の景色などを互によりそって打眺めておられるという情景は、私たちの心をやさしく傷ましめるし、また静かな深い喜びのあることをも感じさせる。