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やまのかみさつじん

山の神殺人

坂口 安吾

「講談倶楽部 第五巻第一〇号」1953(昭和28)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,014 字 · 21 页

青空文庫

不二男にああいう悪い女や仲間がいては、いよいよ早々と不二男を片づけてしまう必要がある。平作の頭には小野の言葉がしみついていた。

「いまに血の雨が降らねばよいが……」

あの疑り深い刑事でも、ヒサのことでは血の雨が降りそうだと考えているのである。

「こいつは、利用できるぞ。ヒサのことで不二男が殺されたと見せかけさえすれば……」

新しい考えが平作の頭にうかんだのである。

平作はお加久と兵頭を馬小屋へ連れこんでワラの上へ坐らせた。平作はチョウチンをマンナカに立てて、二人をジッと見つめて、

「お加久はさすがに相当な行者と見えて、不二男についた死神とメス狐が見えるらしいな」

「見えるとも。憑かれた人間には影がたちこめているものだ。狐の鳴く声もきこえる」

「なんだ。影や声しか見たり聞いたりできないのか。オレには不二男についてる死神もメスの狐もハッキリ姿が見える。死神もメスの狐も不二男の背にしがみついて、両手を首にまき両足を腰にからみつけて藤のツルのようにシッカリしがみついている。死神の奴が右肩から、メス狐の奴が左肩から、不二男の顔をマンナカにまるで顔だけ三ツある化け物のようだが、身体は一ツで、何百年も年を経た藤ヅルのようにくいこんで一体となり、とても放す見込みがない」