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やまへかえりゆくちち

山へ帰りゆく父

小川 未明

「中央公論」1923(大正12)年12月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 7,875 字 · 16 页

青空文庫

」と、植木屋はいいました。

ある日のこと、植木屋は、バルコニーに上がりました。そして、枯れた草の鉢を持って降りてきました。なにか、それに代わりの草を植えようと思ったからです。

その後のことでありました。息子は、夜床の中にはいってから、枯れた草や、持ってきた石のことを思い出しました。せめてあの石なりと大事にして、記念にしておこうと思いました。そして、夜の明けるのを待ってバルコニーに出てみますと、いつのまにか、そこには新しい草の植わった鉢が置いてありました。そして、もとより枯れた草も、石も影だに見られませんでした。

「この草は、どうしたのだ?」といって、家内のものに聞きますと、

「昨日、植木屋が、あなたのお留守に持ってきましたのです。」と答えました。

息子は、枯れた草はしかたがないとしても、石は、どこへいったろう。植木屋に聞いてみようと、さっそく、植木屋を呼びにやりました。

「あの、草の下にあった、黒い石でございますか。つまらない石だと思って、捨ててしまいました。」と、植木屋は答えました。

息子は、これを聞くとたいそう驚きました。

「あの石は、私の大事な石だ。