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いけぶくろのみせ
山之口貘詩文集
山之口 貘
山之口貘『山之口貘詩文集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:池袋の店、沖縄帰郷始末記、おきなわやまとぐち、声をあげて泣く、詩とはなにか、装幀の悩み、つまり詩は亡びる、夏向きの一夜、野宿、暴風への郷愁、私の青年時代、ダルマ船日記、チャンプルー。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,477 字 · 93 页
と繰り返した。すると、巡査は、むっとした顔になったが、むっとしたまま、あらためて、ぼくの住所と、生年月日をきいた。
「これでいいだろう!」
巡査は、ペンをおいて、名刺よりは一まわり大きいかに見えるその日本紙の切れっ端をぼくに寄越したのである。それには、「右ノ者社会主義者ニアラザルコトヲ証明ス」とあって、駒込警察署の角印まであざやかなのであった。
九段上の侯爵邸に辿りつくまで、結局、この証明書を必要とすることが襲いかかって来たことはなかった。侯爵邸の裏口から這入って、友人の胡城君を訪ねると、袴をはいた彼が出て来た。彼は、ぼくに、髯ぐらいは剃れよと云いながら、ぼくの頼みを受入れて呉れたので、当分、侯爵邸にぼくは泊めてもらうことになったのである。
人々は被服廠をはじめ、市内の方々を見て歩いたりしているらしかったが、ぼくはそういうことには一向に興味もなく、何日振りかで、九段の坂上のところまで出て見た。神田一帯が焼野原になってしまって、あちらこちらには、焦げた金庫が残り、その上には、銃劒の兵士の立っている姿が見受けられた。
まもなく、東海道線の復旧で、ぼくも、罹災民の一人として、沿線の、おにぎりや林檎や味噌汁などの恩恵をこうむりながら、無賃乗車、無賃乗船で、郷里へ辿りついたのであるが、おもえば、上京以来、帰郷までの