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いけぶくろのみせ

山之口貘詩文集

山之口 貘

山之口貘『山之口貘詩文集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:池袋の店、沖縄帰郷始末記、おきなわやまとぐち、声をあげて泣く、詩とはなにか、装幀の悩み、つまり詩は亡びる、夏向きの一夜、野宿、暴風への郷愁、私の青年時代、ダルマ船日記、チャンプルー。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,477 字 · 93 页

青空文庫

たのである。ぼくは、父のことが気の毒になって、いっそのこと父を助けるつもりで炭焼男になろうかとおもわないこともなかったのであるが、炭焼男になったところで、たかが、ぼくのことを孝行者みたいに仕立てるだけのことなのではないかと、ぼくは、なまいきにもそう思ったのである。事実、父の失敗は、ぼくが炭焼男になったぐらいのことで救われそうなものなのではなかった。というのも、父の借金は、なにもその親類のものだけに止まっているのではないからなのである。

そこで、ぼくはひそかに、再度の上京を企立てたのであるが、こんどこそはどんな目に会っても、逆戻りしてはなるまいと決心して、どうやら那覇までは出て来ることが出来たのである。しかし、那覇の家は、すでに人手に渡してしまったのであるし、那覇にある親類という親類のことごとくが、父の債鬼でないものはなかったし、いきなり、るんぺん生活へと、ぼくはその第一歩を踏みいれるより外はなかったのである。ぼくは、友人知人を訪ね廻わった。そのうちに、世間から敬遠されるようになって来て、しまいには、波の上海岸の芝生で夜を明かしたり、港のまんなかの奥の山公園に寝泊りをするようになったり、いつのまにやら、松葉などかじったりして空腹をまぎらわしたりするようなことが出来るようになったのである。