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いけぶくろのみせ

山之口貘詩文集

山之口 貘

山之口貘『山之口貘詩文集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:池袋の店、沖縄帰郷始末記、おきなわやまとぐち、声をあげて泣く、詩とはなにか、装幀の悩み、つまり詩は亡びる、夏向きの一夜、野宿、暴風への郷愁、私の青年時代、ダルマ船日記、チャンプルー。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,477 字 · 93 页

青空文庫

紺地に白で「バクさんおいで」と大書されたもので、中学のころの旧友がすでに白髪の頭をして、その幟を両手でかかえているのである。三十五年ぶりとはいえ、錦を着て帰ったのでもないのにと、ぼくはおもわないではいられなかったのであるが、貧乏詩人の、その貧乏が、ぼくの錦ではないのかとおもいなおし、感激をあらたにした次第なのであった。

東京をたつ前に、ある雑誌と二、三の新聞の原稿をたのまれていたのであるが、どれ一つとして現地でそれを書くことができなかった。なかでも、ある新聞からは第一信をと念をおされたのであったが、義理をはたすことができず、従って、外のも不義理の結果になってしまったのである。帰るころになって次第にそのことが気になり、一信だけでも、船のなかで書かねばなるまいとおもい、それを大阪に着いてから、速達で送ってぼくの帰京より一足でも先に東京の新聞社に間に合わせるつもりでいたところ、どういうものかひどくペンが重たくて、それもついに全うすることができず、帰りを急ぎながらも、そのために三晩を大阪の旅館でぐずついてしまったのである。ところが書けないとなると書けないもので、ついにそのまま東京に帰りついたのである。