轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

やまつばき

山椿

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1948(昭和23)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,911 字 · 32 页

青空文庫

――遺書と聞いたとき良三郎はびくりと足を縮めた、それから起直って衿を掻寄せ、暫く封書の裏表を眺めたのち、震える手でそれを披いた。主馬はそっと眼をつむり、なにかを祈るように頭を垂れた。……良三郎は途中まで読んでまた始めへ戻った。幾たびも眼を拭き、幾たびも読んだところを読み直した。それが終ると、遺書を持ったまま手を膝に下ろし、がたがたと、全身を震わせた。

「結婚して七十余日になるが、夫婦の契りはいちどもなかった、あれは榎本良三郎に操を立てとおしたんだ、――どんなに苦しかったろう、良人への義理と、榎本良三郎への義理と、板挾みの七十幾日を独りで苦しんだ、……縁談の定ったとき死ねばよかった、けれども死ねなかったと云う、愛する者にみれんが残った、どんなみれんだと思う榎本、――あれは貴様にすぐれた才能があると信じた、あなたが愛して呉れればひとかどの人間になる、貴様のそう云った言葉も信じた、それが、……どうしようもないめぐりあわせで、梶井へ嫁がなければならなかった、あれはそのことを詫びたかったんだ、貴様にひとめ会って、詫びてから死にたかったんだ」

主馬は手を伸ばして遺書を指した。