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さざんか

山茶花

佐左木 俊郎

「文章倶楽部」1927(昭和2)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,001 字 · 10 页

青空文庫

長作にしては、その一本の山茶花よりも、稲扱き機械の方を欲しいのは勿論だった。しかし長作は、父親の気持ちをないがしろにしてまでは望み得なかった。

「此方の家の爺つあま。病気はどうでがす?」

平三爺は、なんとなく、聞き覚えのある声のように思って、寝床の上に腹這いになった。

「ね、此方の家の爺つあま。――」と操三郎は、縁側へ長くなり、顔を障子の側まで持って行った。その二度目の声で、平三爺は、稲扱き機械を売って歩く、町の操三郎だということがわかった。

「爺つあん!」と長作が、そこの障子を開けた。

「ね、此方の家の爺つあま。」操三郎は縁側へ腹這いになって、平三爺に話しかけた。「機械一台ど、どうでえす? あの山茶花の樹ど、取っ換えまえんか?」

「それさな?……」

平三爺は、口をもぐもぐと動かしながら、げっそりと肉の落ちた面を伏せて考え込むようにした。そして、やがてまたその窶れ果てた血の気のない顔を上げ、伜の長作の顔に見入りながら言うのであった。

「俺はどうでもいいげっとも、長作あ?……」

「長作氏は、ほしがって、ほしがって。――一台の機械で、五人分も仕事が出来んのだから、うんとほしがっていんのだげっとも、やはり、爺つあまさの遠慮で……」