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みんざんのいんし
岷山の隠士
国枝 史郎
「大衆文芸」1926(大正15)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,095 字 · 19 页
ひょっとかすると好敵手かもしれない」
「幾歳ぐらいの野郎だい?」
「そうさな、君よりは十二ほど若い」
「面白くもねえ、青二才じゃアないか」
「止めたり止めたり食わず嫌いはな」
「どうも仕方がねえ、会うだけは会おう」
杜甫は名門の出であった。
左伝癖をもって称された、晋の杜預の後胤であった。曾祖の依芸は鞏県の令、祖父の審言は膳部員外郎であった。審言は一流の大詩人で、沈期、宋之門と名を争い、初唐の詩壇の花形であった。
父の閑は奉天の令で、公平の人物として名高かった。
杜甫は随分傲慢であった。弱い癖に豪傑を気取り、不良青年の素質もあった。ひどく愛憎が劇しかった。それに肺病の初期でもあった。立身出世を心掛けた。その顔色は蒼白く、その唇は鉛色であった。いつもその唇を食いしばっていた。人を見る眼が物騒であった。相手の弱点を見透しては、喰い付いて行くぞというような、変に物騒な眼付であった。威嚇的な物の云い方をした。その癖すぐに泣事を云った。
決して感のいい人間ではなかった。
体質から云えば貧血性であったが、気質から云えば多血質であった。
いつも不平ばかり洩らしていた。
だが意外にも義理堅く、他人の恩を強く感じた。