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とうげにかんするに、さんのこうさつ
峠に関する二、三の考察
柳田 国男
「太陽」1910(明治43)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,027 字 · 10 页
それのみならずどうしてこの山を越えようかと思う人の、考がまた一つである。左右の麓を回れば暇がかかる、正面を越えるなら谷川の川上、山の土の最も多く消磨した部分、当世の語で鞍部を通るのが一番に楽である。純日本語ではこれを「たわ」といい(古事記)また「たをり」ともいっている(万葉集)。「たわ」「たをり」は地名と為って諸国に存するのみならず、普通名詞としても生きている。鎌倉の武士大多和三郎は三浦の一族で、今の相州三浦郡武山村大字太田和はその名字の地である。伊賀の八田から大和へ越える大多和越、その他この地名は東国にも多く、西へ行くほどなお多い。「たをり」という方では大隅の福山から日向の都城へ越える小山、今は馬車の走る国道であるが、その頂上の民居を通山という。伊予喜多郡喜多灘村大字今坊字トオリノ山、備前邑久郡裳樹村大字五助谷字通り山、美濃恵那郡静波村大字野志字通り沢、越後南蒲原郡大崎村大字下保田字通坂、常陸那珂郡勝田村大字三反田字道理山等も皆これである。中国では峠を「たわ」または「たを」といい、その大部分は乢の字を当てている。乢はいわゆる鞍部の象形文字で、峠の字と同じく和製の新字である。