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とうげにかんするに、さんのこうさつ
峠に関する二、三の考察
柳田 国男
「太陽」1910(明治43)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,027 字 · 10 页
六 峠の趣味
日本国の峠の数は大小一万ばかりもあるであろう。誰か統計を取って表を作って見る篤志家はあるまいか。
六 峠の趣味
自分の空想は一つ峠会というものを組織し、山岳会の向うを張り、夏季休暇には徽章か何かをつけて珍しい峠を越え、その報告をしゃれた文章で発表させることである。何峠の表七分の六の左側に雪が電車の屋根ほど残っていたなどいうと、そりゃ愉快だったろうなどと仲間で喝采するのである。さぞかし人望のない入会希望者の少ない会になるであろう。冗談は抜きにして峠越えのない旅行は、正に餡のない饅頭である。昇りは苦しいといっても、曲り角から先の路の附け方を、想像するだけでも楽しみがある。峠の茶屋は両方の平野の文明が、半は争い半は調和している所である。殊に気分の移り方が面白い。更に下りとなれば何のことはない、成長して行く快い夢である。頂上は風が強く笹がちで鳥屋の跡などがある。少し下れば枯木沢山の原始林、それから植えた林、桑畑と麦畠、辻堂と二、三の人家、鶏と子供、木の橋、小さな田、水車、商人の荷車、寺藪、小学校のある村と耕地と町。こんなのが先ず普通である。だから峠の一方の側が急なら急な方から上り、表と裏とあれば裏の方から昇って、緩々と水に沿うて下って来るように路順をこしらえることを力めねばならぬ。