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しまもり
島守
中 勘助
「犬 附島守」岩波書店、1924(大正13)年5月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,146 字 · 37 页
もし濯ぐべき衣類食器などあればついでに洗う。帰って心臓の鼓動のしずまるのをまって読書、要すれば午睡。三時半夕食の用意にかかる。これは二食なのと、暮れるまでにゆっくり散歩の時間を得たいためである。大体の順序は朝におなじ。但し夕食は雑煮なので餅の黴をおとしてからおなじ庖丁で鰹節をかき、茄子の皮をむいて銀杏にきり、つゆのかげんをして鍋をかけねばならぬ。しずかに休んでから手ばやく食器をかたづけ、火をけして鳥居へゆく。そうしてそこからお宮までのあいだの長い路を落葉をひろったり、歌をうたったり、木の根をまたいだり、石段をあがったりおりたりして火ともしごろまで歩いている。
夕。鳥居へおりていったら桟橋のうえに鶺鴒が一羽いた。そっとしゃがんで見てるうちじきにこちらを見つけ ぴぴ ぴぴ となきながら小島が崎の葦のなかへ、そこには二、三羽の友だちがいておなじように鳴きつれて斑尾の道のほうへ飛んでいった。
汀にひとふさの木の実がおちていた。枝わかれした淡紅の茎のさきになんてんに似た暗緑の実をつけている。もって帰ろうとおもって舟板のうえにのせておく。青い岩床の凹みに波がよせてはいあがるように遥に白根の山の峡に灰色の雲が打ちつけている。