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しまもり

島守

中 勘助

「犬 附島守」岩波書店、1924(大正13)年5月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,146 字 · 37 页

青空文庫

その善良朴直のゆえに私は心からこの人を愛する。性来、特に現在甚だ人間嫌いになった私にとってもこの人が島へくることは一尾の鱒が游いできたような喜びを与える。――追記。その後いちど逢ってしみじみ昔話でもしたいと思いつつおりを得ずに幾十年かたつうちに本陣は亡くなった。残念なことをした。家も新築されてあとが栄えてると人づてにきいて喜んでたのだったが。

たまさかに参詣の旅人をのせてくる村の人は芝蝦や烏貝といっしょにこの寒村のつまらぬ名物のひとつとして私の話をするのであろう。彼らは影法師のうつるのも忘れてそっと障子の孔から覘いたり、または森のなかを歩いてるところを見つけて変化ものの正体でも見あらわすようにじろじろと見まわしたりする。多くの者は私の不興げな顔を見て目くばせをし囁きあってそこそこに帰ってゆくが、なかには好奇心にかられ煙草の火をかり宮の名をたずねなどするのにかこつけておずおず話しかけるのもある。彼らの問いは鼠の道のようにきまっている。こんな島のなかにいてなにをするのか、寂しくはないか、恐しくはないか……これらの問いに対して私はなんと答えたらよいであろうか。