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がけしたのいけ
崖下の池
豊島 与志雄
――近代説話――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,109 字 · 25 页
それを釣りに子供たちは集りました。
このエビカニ釣りは、なかなか面白いものでした。エビの胴体にカニの大きな鋏をつけた奴、アメリカの原産とかいって、硝子器の中などに入れ、子供の玩弄物に売り出されたものです。それが、数年間に、東京近県の水田や河川に繁殖していますが、都内のこの池にも可なりいました。針にはあまりかかりませんが、その代り、針がなくとも餌さえつけておけば、餌につかまって上ってきます。それを、水面すれすれのところから、ぱっと陸にはねあげるか、手網ですくい取るかするのです。大きいのになると、胴体だけで十センチもあり、鋏も同じぐらいの長さがありました。
子供たちがそんなことをして遊んでる一方、あちらこちらでは、既に畠がつくられていましたし、または、瓦礫を片附け土を掘り起して、新たな畠がつくられつつありました。そしてぽつりぽつり、と小さな住居が建てられていました。崖上から崖下一帯にかけて、広範囲な焼け跡で、遠くを通る人の姿まで見通せ、すっかり田園の風致でした。
池のそばにも、小さな家が一つ作られました。はじめはトタン葺きのバラックでしたが、後には瓦葺きの建物となりました。