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くずれるおにかげ
崩れる鬼影
海野 十三
「科学の日本」博文館、1933(昭和8)年7月~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,100 字 · 69 页
おお、何という恐ろしい其の場の光景でしょうか。その十人近くの人間と見えたのは、実は人聞だかどうだか解りかねる奇怪なる生物でした。そうです。生物には違いないと思います、こうウヨウヨと蠢いているのですから。
彼等は変な服装をしていました。時代のついた古い洋服――それもフロックがあるかと思えば背広があり、そうかと思うと中年の婦人のつけるスカートをモーニングの下に履いています。しかしそのチグハグな服装はまだいいとして、この人達の顔が一向にハッキリしないのは変です。
私は眼をパチパチとしばたたいて幾度も見直しました。ああ、これは一体どうしたというのでしょう。彼等の顔のハッキリしないのも道理です。全くは、顔というものが無いのです。頭のない生物です。頭のない生物が、まるで檻の中に犇きあう大蜥蜴の群のように押し合いへし合いしているのです。
「ばッ、ばけもの屋敷だ!」
私はそう叫ぶと、室内に死んだようになって横たわっている老婦人を助ける元気などは忽ち失せて、室外に飛び出しました。うわーッと怪物たちが、背後から襲いかかってくる有様が見えるような気がしました。
「助けてくれーッ」