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くずれるおにかげ
崩れる鬼影
海野 十三
「科学の日本」博文館、1933(昭和8)年7月~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,100 字 · 69 页
君が一生懸命の智慧をふりしぼって僕等を呼び出した程の事件というのは……」
警部さんには、よく私の気持が判っていて呉れたのです。これ位嬉しいことはありません。私は元気を取戻しながら、一伍一什を手短かに話してきかせました。
「ウフ、そんな莫迦なことがあってたまるものか。この小僧はどうかしているのじゃないですか」
例の若い警官黒田巡査は、あくまで私を疑っています。
「まアそう云うものじゃないよ、黒田君」分別あり気な白木警部は穏かに制して、「なるほど突飛すぎる程の事件だが、僕はこの家を前から何遍も見て通った時毎に、なんだか変なことの起りそうな邸じゃという気がしていたんだ」
「そうです、白木警部どの」とビール樽のように肥った赤坂巡査が横から口を出しました。「ここの主人の谷村博士は、年がら年中、天体望遠鏡にかじりついてばかりいて他のことは何にもしないために、今では足が利かなくなり、室内を歩くのだってやっと出来るくらいだという話です」
「可笑しいなア、その谷村博士とかいう人は、確かに空中をフワフワ飛んでいましたよ」私は博士が足が不自由なのにフワフワ飛べるのがおかしいと思ったので、口を出しました。