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くずれるおにかげ

崩れる鬼影

海野 十三

「科学の日本」博文館、1933(昭和8)年7月~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,100 字 · 69 页

青空文庫

「やあ」

目醒めた警備の人々は、相手の真黒に汚れた顔を見てふきだしたい位でした。瞼は腫れあがり、眼は真赤に充血し、顔の色は土のように色を失い、血か泥かわからぬようなものが、あっちこっちに附着していました。しかしそれは自分の顔のよごれ方と同じであったのですが、始めは気がつきませんでした。

「化物はどうしたな、オイ巡視だッ」白木警部の呶鳴る声がしました。

私もその声に、ハッキリと目が醒めました。ハッと思って傍を見ると、一緒にいた筈の兄の荘六の姿が見えません。

「兄さん――」

呼んでみても、誰も返事をする者がありません。

「もしもし、兄を知りませんか」

「帆村君かネ」と警部さんも訝しそうにあたりを振りかえってみました。「そこにいたと思ったが、見えないネ」

私は急に不安になりました。

警部さんは巡視隊を編成すると、勇しく先頭に立って歩きはじめました。

「私も連れていって下さい」

「ああ、恐ろしくなければ、ついて来給え」

そういって呉れたので、私も隊伍のうしろに随って歩き出しました。

歩いているうちにも、化物の封鎖された隧道のことよりも、兄のことが心配になってたまりません。