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くずれるおにかげ
崩れる鬼影
海野 十三
「科学の日本」博文館、1933(昭和8)年7月~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,100 字 · 69 页
山の上に、まるで噴火口でもあるかのように、ポッカリと大穴が明いているのです。穴から下を覗いてみますと、底はどこまでも続いているとも知れず、真暗見透しがつきません。
「こんな穴は、以前から有ったろうか」白木警部は不安に閃く眼を一同の方に向けました。
「いいえ、ありませんです。ここはずッと盆地のように平になっていて、青い草が生えていたばかりですよ」
「ほほう、すると何時の間に出来たのだろうか」
「もしや……」
「もしや何だッ」と警部は声をはりあげて聞きかえしました。
「もしや、あの化物が明けたのでは……」
「そんなことかも知れん。天井の壁さえ抜けば、あとは軟い土ばかりだったのかも知れない」
「すると化物は、どッどこに……」
「さあ――」と警部が不図傍らの土塊に眼をうつしますと、妙なものを発見しました。
「おお、そこに人間の足が見えるではないか」
一行はあまりに近くへ寄りすぎて、穴ばかりに気をとられ、傍らの堆高い土塊に気がつかなかったのです。そこから二本の足がニョッキリと出ています。全く裸の脚です。誰の足でしょう。行方不明になった谷村博士も黒田警官も洋服を着ている筈です。