轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

じゅんさじしょく

巡査辞職

夢野 久作

「新青年」1935(昭和10)年11~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,907 字 · 63 页

青空文庫

あのラジオを止めさせん中はドウモ安心ならんと思うがなあ」

この話をマユミから洩れ聞いた一知は、即座に決心してしまった。それは一知にとって絶体絶命の最後の楽しみを奪われる宣言に外ならなかったからであった。

ちょうどその頃のこと。ラジオで三晩続けて探偵小説の講話があって、絶対に発見されない殺人の手段なぞに関する話が、色々な例を引いて放送されたので、一知は村中の人々の怨みを一人で代表しているような気持ちになって、全身を耳にして傾聴した。そうしてラジオの器械を研究する以上の熱心さを以て夜となく昼となく考え抜いた結果、これなら大丈夫と思われる一つの成案を得た。

一知は先ず勝手口の継ぎ嵌め戸の、一枚の板の釘の頭に、手製の電池に残っている硫酸を注意深く塗附けて出来るだけ自然に近い状態に腐蝕させ、その板を自由自在に取外せるようにした。それから垣根用の針金を買いに行くと称して野良着のまま町へ出て、兼ねてから誤魔化しておいた小遣いで古い学生服を買って野良着の上から巧みに着込み、新しい藁切庖丁と安いメリヤスの襯衣と軍隊手袋と、安靴下を買い集めると、町外れで学生服を脱いで、マユミに遣る反物や菓子と一緒に持って帰り、取敢えず学生服を焼肥と一緒に焼棄て、兇器と襯衣を押入の奥に隠しておいた。