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おびひろまで
帯広まで
林 芙美子
「文藝春秋」1936(昭和11)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,656 字 · 28 页
広い化粧部屋で、ドオランを塗ったりアイシャドウをつけたりしているマネキン達の後から、宿屋の女中達が珍しそうに覗きに来た。伊代は化粧が終るとタップダンスの真似をして皆を笑わせたりした。
化粧が済むと、一人一人街の化粧品屋へ連れてゆかれた。伊代は幣舞橋と云う大きな橋の傍の化粧品店へ連れてゆかれた。陳列台へ向って支度をして待っていた土地の女給の顔をなおし始めると、暗い夜霧の中から、白い女の顔が、伊代の店を囲んで、あっちからもこっちからも覗き始めている。
「コオルドクリームはお気持ちが悪いと云ってお使いにならない方がございますが、これはお寝みになります時、こうして万遍なく顔へ塗ってガーゼでお拭き取りになれば、まことにさっぱりするものでございます。――和製品だからと馬鹿にしていらっした方達がございましたら一度馬鹿にされたと思っておためし願いたいのでございます……」
女給は固煉白粉でギラギラした青い顔をしていた。コオルドクリームは中々のびてゆかなかった。群集の中では伊代を、「西洋人みたいだ」と云うものもあった。ひととおり、女給の頬にオレンジの紅を刷いて、化粧が出来上ると、チラホラその化粧クリームを買って帰る娘達もあった。