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ばくまついしんかいこだん

幕末維新懐古談

高村 光雲

10 仏師の店のはなし(職人気質)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,556 字 · 4 页

青空文庫

と訊くと、「それは、何さんの所の弟子の何さんという人の作だ」という。それで、その作をした人の名が一人に分り、二人に記憶され、今度、たとえば、その作人がその塗師屋へ使いに行くとして、親方の挨拶が、ガラリ違って、丁寧になるという塩梅、それはおかしなものであります。

右の如く、弟子たちは、仕事のことに掛けては、一心不乱、互いに劣るまい、負けまいと、少しの遠慮会釈もなく、仕事本位の競争をしますが、内面の交わりとなると、それはまた親密なものでありました。

たとえば、今夜はお鳥様だから、一緒に出掛けようという時に一人の弟子は、懐工合が悪いので、行きしぶっているとして、工面の好い連中が、「何を考えてるんだ。出掛けろ出掛けろ」と、一切飲食のことをも負担したもので、なかなかうつくしいところがあったものです。

と、いって、またなかなか仕事の事になると許さない処がある。田舎から用事のある人が訪問て来て、或る仏師の店を覗き、「もし、お尋ねしますが、此店に仏師の松さんはいますか」

と聞いたものです。すると、誰かが、

「仏師の松さんね。そんな人はいないよ」と返事をしたもの。

実は其所に松さんは隅の方で小さくなって仕事をしているが、それはまだ「仕上げ師」