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へいまとうぐいす

平馬と鶯

林 不忘

「少年倶楽部」1927(昭和2年)2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,130 字 · 21 页

青空文庫

これを聞くと平馬は、ちょっとびっくりした。今度の仕合にどういう手で立ち合ったものかといろいろ考えているうちに、自分でも知らずにうっかり結城の自藩を出はずれて、ここまで来たものと見えるが、それにしても、いつあの月見橋を渡ったろう? さっき橋を渡ったくせに、平馬はすっかりそれを忘れているのだった。が、仕合が近づくにつれて、殺気立っている両藩の若侍である。ここが下妻の里とすれば、自分の姿を見つけられては、ひと騒動もち上るに相違ない。これは早々に引っ返した方がよい――平馬は急いで立ち上がろうとした。少女が止めた。

「ただ今お茶を――この辺でお見かけ申したことのないお方でございますが、あなた様は旅のお方でございますか」

「さよう」と平馬はどきまぎして、

「旅の者でござる」

するとこの時、奥の座敷で、大勢の人の話し合っている声が平馬に聞えた。

「何かの寄り合いですか」

平馬が訊いた。

「はい。旅のお方なら御存じございますまいが、この筑波のお山のお祭が近づきまして、例年のとおり、となりの結城藩と剣道の仕合がございますので、こちらの下妻の若侍たちが相談しているのでございます。