轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

こうふくのはさみ

幸福のはさみ

小川 未明

「婦人界 6巻11号」1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,458 字 · 9 页

青空文庫

」といいました。

正吉は、こう聞くと、やはり自分のお母さんではなかったことを知りました。そして、泣くのをやめて、とぼとぼと、それから、酒を買いに酒屋の方へと歩いてゆきました。

正吉が、徳利を下げて帰るときにも、女の人は、じっとすわっていました。正吉は、悲しさが胸にこみあげてきて、早く家へ帰って、また、死んだお母さんを思い出して、ぞんぶんに泣こうと道を駆け出したのであります。

父親は、正吉が、酒を買って帰るのを待っていました。そして、子供が、どんな悲しい思いにふけっているかということも知らずに、徳利を受け取ると、さっそくその酒を盃に注いで飲みはじめました。

父親は、さもうまそうに舌打ちをして飲んでいましたが、にわかに盃を下に置いて、考え込みながら、

「不思議なこともあるものだ。この酒は梅の香いがする。この香いは、死んだ妻が髪の毛につけていた香油の香いそっくりだ。」と、独り言をして、死んだ正吉の母親を思い出したように考え込みました。

父親のいうことを聞くと、正吉は、びっくりしました。彼は先刻、寺の前で見た女の人が、どうしてもお母さんにちがいないような気がして、考えにふけっていたやさきでありましたから、このとき、彼は、あったままを父親に話したのであります。