轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
まぼろしのかなた
幻の彼方
豊島 与志雄
「中央公論」1922(大正11)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,763 字 · 84 页
それが一二日たつと、また仰向にひっくり返った。そういうことを二三度くり返した。大きく脹れ上った腹が固くなり、尾鰭の先が硬ばり、骨立った頭に眼玉が飛び出していた。思い出したように四五度慌しく鰓を動かしては、またじっと口を閉じた。死んだのかと思って指先でつっつくと、脹れた腹からつんと出てる鰭を動かしてちょろちょろと泳いだ、そういう状態が長く続いた。しまいには順造も秋子も、早く生きるか死ぬるかしてくれればいいと思うようになった。そう口に出してまで云った。長く苦しめるのが可哀そうだった。そして二人は、余りその方を見ないようにした。二週間ばかりたった或る朝、金魚はもう動かなくなっていた。水から取り出してみると、あれほど固かった大きな腹が、柔かくぶよぶよになっていた。内部の臓腑が腐ってるらしかった。
順造は怖じ恐れた眼付で、秋子の方を見やった。大きく脹らんでる腹が、布団越しにも感ぜられる気がした。日に僅かな水液しかはいらないで、而も多量の粘液を排出しながら、益々脹らんでくるその腹が、不気味さを通り越して奇怪だった。それをじっと仰向に抱えて、彼女は熱と悪臭と疼痛とのうちに、うとうとと眠っていた。