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ゆうれいやしきのさつじん

幽霊屋敷の殺人

山本 周五郎

「少年少女譚海」1930(昭和5)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,339 字 · 19 页

青空文庫

「よし、じゃあ今度だけ赦してやる、ところでねえ壮太君、実はまた面白い事件で君に頼みたいことがあるんだ」

「やあそいつは素的ですね、どんなことでもやりますよ」

「まあちょっと耳をかしたまえ」

龍介はそういって、壮太の耳に口をよせてなにかしばらく囁いていたが、

「ね、分かったろう?」

「ようござんす、幽霊って奴あ私ゃあんまり好きじゃありませんが、坊っ……じゃねえ春田さんと一緒ならやります!」

「じゃ頼んだよ、いいかい、ちょうど八時にだぜ!」

そう固く約束して、龍介は白い布で包んだ荷物を壮太にあずけて、ふたたび自動車を警視庁へ走らせた。

その日、晩餐後七時ごろ龍介は徒歩でぶらりと白堊館を訪れた。主人を失った白堊館には、下男吾郎がただ一人寂しそうに夜を守っていた。

「すこし調べることがあるから!」

そういって博士の書斎へ入った龍介は、五分ばかりすると、手紙を持って出てきて、「すまないがこの手紙を松川理学士に届けてくれ、そして返辞を貰ってくるんだ」といいつけた。

「へい、行ってめいりやすだ」

吾郎は手紙を受取ると、ぐずくさと白堊館を出ていった。ちょうど時計が八時をうっている時だった。