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ゆうれいせんのひみつ

幽霊船の秘密

海野 十三

不詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,846 字 · 62 页

青空文庫

はなはだ残念です」

「ふうむ、そいつは惜しいことをした」

船長は眼を洋上にむけた。

そのうちどこからか、汽船が通りあわすかもしれない。だがそれは運次第であって、そんなものを期待していてはいけないのであった。確たる今後の方針をどうするか、それをきめて置かなければならない。

そのころ、乗組員たちが、ぼつぼつ起きてきた。

「ああ夢だったか。俺はまだ風浪と闘っている気がしていたが……」

風浪は凪いだ。だが風浪よりもわるいものが、彼等を待っているのだ。

それは飢と渇とであった。いや、飢より渇の方がはるかに恐ろしい。雲はだんだん薄くなって、熱い陽ざしがじりじりとボートのうえへさしてきた。この分では、飲料水の樽は、すぐからになるだろう。

「船長、漕がなくてもいいのですか」

「うむ、二三日はこのまま漂流をつづける覚悟でいこう。そのうちに、なにかいいことが向こうからやってくるだろう」

船長は、たいへん呑気そうな口をきいた。だが彼は、本当はひとり、心のうちでこまかいところまで考えていたのだ。こうなれば、部下の体力を無駄につかわないことが大切だった。できるだけ永く、部下を元気に保っておかなければならない。