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ゆうれいせんのひみつ

幽霊船の秘密

海野 十三

不詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,846 字 · 62 页

青空文庫

「おーい、水を呑ませてくれ。咽喉が焼けつきそうだ」

船員の一人が、くるしそうなこえをあげた。

「船長、水を呑ませていいですか」

「うん、水は一番大切なものだ。とにかく今朝は、小さいニュームのコップに一杯ずつ呑むことにしよう。あとは夕方まではいけない」

「えっ、あとは夕方までいけないのですか」

漂流するボート

たった一杯の水が、どのくらい遭難の船員たちを元気づけたかしれなかった。

次に海水にびしょびしょに濡れた握り飯が一箇ずつ分配された。おはちを持ちこんであったので、握り飯にもありつけたのである。

「おい、そこにあるのは缶詰じゃないか」

「おおそうだ。俺は手近にあった缶詰を卓子掛にくるんで持ちこんだのだった。こんな大事なものを、すっかり忘れていた」

わずか十個に足りない缶詰だったけれど、遭難ボートにとっては、意外な御馳走であった。

「おい、三つばかり、すぐあけようじゃないか」

「待て、船長に伺ってみよう」

船長は、さっきから黙って、その方を見ていたので、部下にいわれるまえに口をひらいた。

「あけるのは、一個だけでたくさんだ。このうえ幾日かかって救助されるかわからないのだから、できるだけ食料を貯えておくのが勝ちだ。