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じょにかえてじんせいかんじょうのしぜんしゅぎをろんず

序に代えて人生観上の自然主義を論ず

島村 抱月

「近代文芸之研究」1909(明治42)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,453 字 · 11 页

青空文庫

二

しかもなおこれらのものが真に私の血と肉とに触れるような、何らの解決を齎らし来たったか。四十の坂に近づかんとして、隙間だらけな自分の心を顧みると、人生観どころの騒ぎではない。わが心は依然として空虚な廃屋のようで、一時凌ぎの手入れに、床の抜けたのや屋根の漏るのを防いでいる。継ぎはぎの一時凌ぎ、これが正しく私の実行生活の現状である。これを想うと、今さらのように armer Thor の嘆が真実であることを感ずる。

二

私はどうしたらよかろうか。私は一体どうして日々を送っているか。全くのその日暮し、その時勝負でやっているのだろうか。あながちそうでもないようである。事実、自分の日常生活を支配しているものは、やっぱり陳い陳い普通道徳にほかならない。自分の過去現在の行為を振りかえって見ると、一歩もその外に出てはいない。それでもって、決して普通道徳が最好最上のものだとは信じ得ない。ある部分は道理だとも思うが、ある部分は明らかに他人の死殻の中へ活きた人の血を盛ろうとする不法の所為だと思う。道理だと思う部分も、結局は半面の道理たるに過ぎないから、矛盾した他の半面も同じように真理だと思う。