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ゆみまちより

弓町より

石川 啄木

「東京毎日新聞」1909(明治42)年11月30日、12月2日~7日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,684 字 · 18 页

青空文庫

今思ってもその心持が忘られない。

詩が内容の上にも形式の上にも長い間の因襲を蝉脱して自由を求め、用語を現代日常の言葉から選ぼうとした新らしい努力に対しても、むろん私は反対すべき何の理由ももたなかった。「むろんそうあるべきである」そう私は心に思った。しかしそれを口に出しては誰にもいいたくなかった。いうにしても、「しかし詩には本来ある制約がある。詩が真の自由を得た時は、それがまったく散文になってしまった時でなければならぬ」というようなことをいった。私は自分の閲歴の上から、どうしても詩の将来を有望なものとは考えたくなかった。たまたまそれらの新運動にたずさわっている人々の作を、時おり手にする雑誌の上で読んでは、その詩の拙いことを心ひそかに喜んでいた。

散文の自由の国土! 何を書こうというきまったことはなくとも、漠然とそういう考えをもって、私は始終東京の空を恋しがっていた。

○

釧路は寒い処であった。しかり、ただ寒い処であった。時は一月末、雪と氷に埋もれて、川さえおおかた姿を隠した北海道を西から東に横断して、着てみると、華氏零下二十―三十度という空気も凍たような朝が毎日続いた。