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ゆみまちより
弓町より
石川 啄木
「東京毎日新聞」1909(明治42)年11月30日、12月2日~7日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,684 字 · 18 页
氷った天、氷った土。一夜の暴風雪に家々の軒のまったく塞った様も見た。広く寒い港内にはどこからともなく流氷が集ってきて、何日も何日も、船も動かず波も立たぬ日があった。私は生れて初めて酒を飲んだ。
ついに、あの生活の根調のあからさまに露出した北方植民地の人情は、はなはだしく私の弱い心を傷づけた。
四百トン足らずの襤褸船に乗って、私は釧路の港を出た。そうして東京に帰ってきた。
帰ってきた私は以前の私でなかったごとく、東京もまた以前の東京ではなかった。帰ってきて私はまず、新らしい運動に同情を持っていない人の意外に多いのを見て驚いた。というよりは、一種の哀傷の念に打たれた。私は退いて考えてみた。しかし私が雪の中から抱いてきた考えは、漠然とした幼稚なものではあったが、間違っているとは思えなかった。そうしてその人たちの態度には、ちょうど私自身が口語詩の試みに対して持った心持に類似点があるのを発見した時、卒然として私は自分自身の卑怯に烈しい反感を感じた。この反感の反感から、私は、まだ未成品であったためにいろいろの批議を免れなかった口語詩に対して、人以上に同情をもつようになった。