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きゅうどうちゅうそでん

弓道中祖伝

国枝 史郎

「キング」1932(昭和7)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,647 字 · 19 页

青空文庫

その際妾にも参るようにと、懇におすすめ下されましたが……」

「…………」

矢声は掛けなかった、充分に狙い、切って放した正次の箭! 中って悲鳴、又も宙に、もんどり打って仆れた敵! ワーッとどよめいて敵は引いたが、懲りずまた箭をハラハラと射かけた。

渦巻かせた兵庫の薙刀のために、箭は数條縁へ落ちた。

「四本目の箭、いざ遊ばせ!」

「うむ」と受け取り、そのままつがえ

「何故ご下向なされませなんだ」

「先祖正成より伝わりました、弓道の奥義書『養由基』九州あたりへ参りましたら、伝える者はよもあるまい、都にて名ある武士に伝え、伝え終らば九州へと……」

「養由基? ふうむ、名のみ聞いて、いまだ見たこともござらぬ兵書! ははあそれをお持ちでござるか」

云い云い正次は、キリ、キリ、キリ、と弦をおもむろに引きしぼった。

「養由基一巻拙者の手に入らば、日頃念願の本朝弓道の、中興の事業も完成いたそうに。欲しゅうござるな! 欲しゅうござるな。……さてこの度は何奴を!」

満月に引いてグッと睨んだ。

6

自分の部下を目前において、二人まで射倒された雉四郎は、怒りで思慮を失ってしまった。箭に対して刀を構えようとはせず、持っていた槍を引きそばめ、衆の先頭へ走り出た。