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でしのこころ
弟子の心
宮本 百合子
「新家庭」1923(大正12)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,926 字 · 8 页
学課についてでも、課外の読書に関してでも、或はもっとプライヴェートな相談でも、他に障害を来さない程度で、指導をいとわれなかった。読んで見るとよい本なども丁寧に教えられた。私が、科学的な書籍に或る程度の興味を感じ得るようになったのも、自己の裡に湧き上る思想、感情を、先ず持ちこたえて整理することを覚えたのも、皆、先生との座談的な質問、応答の裡に、習ったと云ってよい。
私のみならず、他の多くの若い女性にとって、先生は知識の指導者であるばかりでなく、一種心の頼りであった。うっかりしたことを云っては愧しいと云う心持のある他方には、所謂先生に対して云えないことも云っても大丈夫と云う安心が暗黙のうちに在った。
熾んな求道慾と、人生の風情と云うものを、美しく調和させようとするところに、先生の人を導く的があったのではなかったろうか。
児童教育の理想を話される時など、人性の尊厳、微妙さの感歎、セコンド・ジェネレーションに対する健全な期待の心などが、流露した。先生の話を伺っているうちに、若いものは、生活を愛し、価値を高め、積極道に活きずに居られないような、光明、希望、勇気を与えられたのであった。