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こうきにかえて〔『きょうそのぶんがく』〕

後記にかえて〔『教祖の文学』〕

坂口 安吾

「教祖の文学」草野書房、1948(昭和23)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 924 字 · 2 页

青空文庫

私は社会人としての自我というものを考えるから、政治についても考えるけれども、政治家にはなる筈のない生れつきである。

私は今の世に生れたから文士になったが、昔の世に生れても、決して大名貴人になろうとか、天下の豪傑になろうとは思わず、琵琶法師とか遊吟詩人というようなものになったろうと思う。

尤も私も子供の頃には軍人だの坊主になろうと考えたから、天下の豪傑や高僧になろうと試みるかも知れないが、結局は遊吟詩人とか琵琶法師というものに落付くようなタチであろうと思っている。

思うに、小林秀雄も政治家にはならないタチの教育宗教型の詩人であるが、然し彼は、琵琶法師や遊吟詩人となって一生を終ろうとする茶気はなく、さしずめ遁世して兼好法師となるところが、僕と大いに違っているのだろうと考える。

似て、似きれない、そういう違いが、教祖の文学というものを書かせたのだろう。

あらそわれないものである。私は小さい時から、豪傑を夢みる一方に、遊吟詩人を熱愛し、長じてフランスの本を読むようになったころも、ジョングラーという言葉にぶつかると、なつかしさに、いっぱいになったものだ。