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おほりばたさんだい
御堀端三題
岡本 綺堂
柳のかげ「文藝春秋」1937(昭和12)年8月、怪談「モダン日本」1936(昭和11)年9月、三宅坂「文藝春秋」1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,863 字 · 12 页
支那にこんな話がある。大勢の集まったところで虎の話が始まると、その中の一人がひどく顔の色を変えた。聞いてみると、その人はかつて虎に出逢って危うくも逃れた経験を有していたのである。私も馬車に轢かれそうになった経験があるので、交通事故には人一倍のショックを感じられてならない。
そのとき私のからだは無事であったが、抱えていた五月人形の箱は無論投げ出されて、金太郎も飾り馬もメチャメチャに毀れた。よんどころなく銀座へ行って、再び同じような物を買って持参したが、先方へ行っては途中の出来事を話さなかった。初の節句の祝い物が途中で毀れたなどといっては、先方の人たちが心持を悪くするかも知れないと思ったからである。その男の児は成人に到らずして死んだ。