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びしょう
微笑
豊島 与志雄
「雄弁」1919(大正8)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,995 字 · 43 页
」
「へえ、君の方もですか。」
「君これはうっかり出来きせんぜ。僕達は屹度誰かに悪意を持たれてるに違いありません。余り種々な人に無作法な真似をしましたからね。」
考えてみると一々思い当るふしがあった。
私達はその夜またカフェーに寄って、麦酒を飲みながら種々善後策を講じた。もう疑う余地はなかった。気味悪いようでも、また痛快なようでもあった。
然しその男は果して何者だろうということが、最後の疑問として残った。或は警察の者ではないかとも思えたが、それならば、あんな風に私達の前をうろつき廻ったり、こちらに気取られるようなへまな真似をしたりする筈はなかった。否第一、もっと直接に私達に注意するに違いなかった。それでは?……私達は遂に次の結論に達した。――あの男は屹度、或る旧式な教育者か成金か貴族か、何でも金があってそして隙な人間の手下に違いない。自分の娘等が私達のために「脅かされた」ことがあるので(私達は実際立派な服装をした若い娘に話しかけたこともあった)、私達を「不良青年」とでも思って、「現行犯」を捕えて懲戒してやろうと思ってるのだ。そして余計な道義心と金と男とを使ってるのだ。