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こころのアンテナ

心のアンテナ

佐々木 邦

「現代」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,973 字 · 27 页

青空文庫

「学校は?」

「甲種商業学校を卒業しました」

「イヨ/\凄い。俺は師匠が勤まらないよ」

「飛んでもない」

「学があるだろう。学なんか忘れてしまわないと義太夫は覚えられないよ」

「初めからないんですから、大丈夫です」

「商業学校なら英語が出来るだろうな?」

「はあ。真の少しですけれど」

「義太夫のことを英語で何と言うね?」

「さあ」

「三味線は?」

「存じません」

「駄目だなあ」

「あなた、そんな馬鹿なことを訊くものじゃありませんよ。美代子が笑っていますわ」

と奥さんが注意した。

「美代子は学校で習っているから知っているだろう。義太夫のことを何と言う?」

「義太夫は義太夫よ」

と美代子さん極く無造作に答えた。

「英語だよ」

「英語でも義太夫でしょう」

「可笑しいね。三味線は?」

「矢っ張り三味線」

「それじゃ日本語と同じじゃないか?」

「日本にあって西洋にないものは日本語が通るのよ」

「するとお父さんは英語でも豊竹鐘太夫か?」

「えゝ」

「成程ね。オリンピックは日本でもオリンピックか? これは一つ学問をした」

「負うた子に教えられってのはこのことよ」

と奥さんも美代子さんが自慢だ。

「浅瀬を渡るこの佐々木」