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しんりしけん

心理試験

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,728 字 · 46 页

青空文庫

併し安全という点では最上だ。老婆の金は(半分になったことは誰も知らない)ちゃんと元の場所にあるのだから、この財布の遺失主は絶対に出る筈がない。一年の後には間違なく蕗屋の手に落ちるのだ。そして、誰憚らず大びらに使えるのだ。彼は考え抜いた揚句この手段を採った。若しこれをどこかへ隠して置くとするか、どうした偶然から他人に横取りされまいものでもない。自分で持っているか、それはもう考えるまでもなく危険なことだ。のみならず、この方法によれば、万一老婆が紙幣の番号を控えていたとしても少しも心配がないのだ。(尤もこの点は出来る丈け探って、大体安心はしていたけれど)

「まさか、自分の盗んだ品物を警察へ届ける奴があろうとは、ほんとうにお釈迦様でも御存じあるまいよ」

彼は笑いをかみ殺しながら、心の中で呟いた。

翌日、蕗屋は、下宿の一室で、常と変らぬ安眠から目覚めると、欠伸をしながら、枕許に配達されていた新聞を拡げて、社会面を見渡した。彼はそこに意外な事実を発見して一寸驚いた。だが、それは、決して心配する様な事柄ではなく、却って彼の為には予期しない仕合せだった。というのは、友人の斎藤が嫌疑者として挙げられたのだ。